弘前市役所前での街頭演説 | マニフェストを提案する弘前市民の会

弘前市役所前での街頭演説

今日、下田はじめ候補、金沢たかし候補、相馬しょう一候補の三名が連続で弘前市役所前で街頭演説を行った。三名の候補の演説を全て聞いた感想をここで述べたい。

トップバッターは下田はじめ候補。「市民と一緒に」「市民とともに」という文句が何度も飛び出す。市政改革はまず徹底した情報公開だと語り、財政・予算に関して市民が参加し検討する委員会を設けるなど、透明性の高い市政への転換を強くアピールしていた。そのほか弥生リゾート跡地問題や救急救命医療改革、退職金ゼロなど自身の政策をしっかり語っていた姿が印象深い。

二番目は金沢たかし候補。この前の衆院選では木村太郎氏の応援のため、勤務時間中に市職員を動員したことに大きな批判があったことを気にしてか、今回は休憩時間に合わせて部課長以下に動員をかけて臨んだらしい。「1時になったら職員は仕事に戻ってください」とわざわざ声をかける気の使いようである。

しかしさすがに前職である。山内旧相馬村長、田中旧岩木町町長、市議会議員48名、県会議員6名、連合青森の山本会長、新渡戸商工会議所会頭や職域団体の主だった幹部が勢ぞろいしていた。応援演説に立った人々が口々に、「黄色い人たち(下田陣営)」が誹謗中傷を行った」「税金の使い道はこちらの市議会議員の先生方と一緒に決めたこと。それを批判するということは議会を愚弄するもの」などと大げさな反応を示していた。どうも、市長や議会を批判するとそれは彼らを愚弄することになるらしい。やれやれ、ここは北朝鮮ですか、と聞いていて頭が痛くなった。

田中元旧岩木町町長に至っては、金沢氏の高齢多選批判を逆批判し、「金沢さんは多選ではなく今回が一期目だ」と擁護。報道陣に対しても食って掛かっていたが、しかしさんざん金沢氏の前市政での功績をあげつらっていたのも田中氏だった。合併を成功させたと賛辞していたが、14市町村合併を失敗に終わらせたことについては一言も言及がなかったあたり、随分ご都合主義的である。


また、今回の選挙は合併選挙だ、刷新とか改革とか言うが、金沢さんが既にやっていると持ち上げたのにはずっこけてしまった。事実上の吸収合併と言われ、金沢氏自身、「相馬や岩木の人をあたたかく迎え入れよう」とかつて言ったように、金沢氏の頭の中では対等ではなく吸収合併に他ならない。それを一番良く感じているのは山内さん、田中さん、あなた方ではないのか。だからこその刷新であり改革なのである。金沢氏の発想は、合併しようが前市政のまま変わっていない。なぜなら彼はマッカーサーを引用して最後にこう述べた。「I shall return(私は戻ってくる)」と。要するに金沢氏の中では市政は継続中なのである。どうせなら「Old soldiers never die; They only fade away.(老兵は死なず、ただ消え去るのみ)」と言って欲しかったが。

ところで、金沢陣営の演説が続く最中、私は「市民」という言葉が何回出るかを数えていた。かろうじて「市民」という言葉が出たのは、山内旧相馬村村長が1回、公明党の県議が2回、連合青森の山本会長が1回、計4回だった。肝心の金沢候補はと言うと、一度として「市民」という言葉は出なかった。下田はじめ氏が「市民」という言葉を何度も繰り返し使っていたのに比べれば全く対照的である。

ここに、金沢氏と下田氏のスタンスの違いが浮き彫りになる。下田氏は常に市民の目線を意識した発言に徹しているが、金沢氏の視野にあるのは、国、県、市議会議員であり、市民は存在していないということである。これは大変わかりやすい。この一つをとっても、合併した新弘前市の舵取り役を金沢氏に委ねることなどとんでもない話だと感じた。

何より金沢氏の演説には『熱』がない。支持者らに囲まれて、支持者だけにしかわからない言葉で語りかける。まさしく「裸の王様」そのものであった。それら支援者の輪の外から見えた光景は、古ぼけたこれまで通りの市長と、太鼓持ちとごますりに徹し続ける哀れな人々である。これが市民の代表なのだとすれば、実に情けない話である。

最後に相馬しょう一候補の演説を聞いた。堅実に政策を語る姿は、やはり金沢候補より数段正直で、真面目であった。途中右翼の街宣車の妨害が入ったが、まるで金沢候補の演説が終わった頃を見計らったかのようにやってきたのが印象深かった。敵の敵は味方である。最後まで演説を聞き、しっかり握手した。

相馬候補の政策の中で特筆すべきは、農業を基本に据えることの重要性、そして奥羽本線にフリーゲージトレインを導入しようという政策である。この二つの政策には私は全く同感である。

この三名の中で、唯一自身の政策、新しい市政の展望を語らなかったのが金沢候補だった。そのことははっきりとここに報告しておきたい。


マニフェストを提案する弘前市民の会 上田 勝